死ぬ気ね後日談 役者感想編
第二回 井苅智幸 『ほんとに死ぬ気ね』
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「舞台上で死にたい」なんてかっこつけて言う輩が、たまにおりますが、私、本公演において「あわや」なとこまでいきました。
その「あわや」な鍵を握る人物、演出助手「萩尾麻由」。本番中は舞台裏で我々のサポートに奔走して下すったんだが、楽日にそれは起こった。
劇中、私演ずるオキオが倉澤愛演ずるネリコに頭にフォークを刺されるシーンがある。それは私が「細工された帽子」を被ることで始めて成り立つ訳なんだが、「さあ出番だ」、と小道具置き場に行くも帽子が無い。おかしい。ちゃんとセットしたよ、俺は。が、探せど探せど見つからない。何でだ。もう時間が無い。どうする?俺・・・。やる。やるしかない。みんな、今までありがとう。俺、伝説になるよ・・・。見とけ、俺の生き様見とけぇぇぇ!

最後のステージにゆっくりと向かう俺。ふと、稽古中に本谷氏に言われた言葉が頭をよぎる。
「井苅さん、もし本番で帽子忘れたら、本当に刺されてもらうからね。」
そんときは、「そんなわきゃあねーや」とか思ってたのになぁ。実践しちゃうのか、俺は・・・。
と、目の前に萩尾さんがっ。すがる思いで尋ねる俺。
「萩尾さん、帽子知りません?」

「帽子?・・・あっ!捨てちゃった。」

どぉーん。捨てちゃった。捨てちゃったよ、この人。説明すると、楽日だから終演後撤収しやすいよう本番中に使い終わった小道具、順番に捨てちゃってたのね。で、間違って捨てちゃってたのね。たのね。のね。ぬ。
慌ててゴミ袋から帽子ほじくり出して差し出す、萩尾さん。受け取る、俺。
そして、抱擁。二人、無言の抱擁。舞台裏で。よくわかんないけど。肩ポンポン叩きながら。熱く、熱く。そう、そこには確かに「愛」があった。

そんな大きな愛に送り出された俺はステージで大爆発。楽日に封印を解いたネタ、「一人インディー・ジョーンズ」で、まず誤爆。そして帽子没収につき、あわやフォークで血だらけ。最後はカーテンコールの「THE虎舞竜シャツ」で、この上ない自爆を犯し、己にとどめを刺したのだった。

楽日は魔物。

魔物=50点。

井苅=-50点。

お知らせ
井苅智幸連載エッセイ「キーパーはじいたところに、定食!」第2回は、弁田勤の話。弁田ファン必見!アドレスは、http://www.h2.dion.ne.jp/~rescue

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