死ぬ気ね後日談 役者感想編
第四回 有坂大志 『劇団、本谷有希子を終えてから』
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「劇団、本谷有希子を終えてから」
裸蟲社代表  有坂 大志


 椎名林檎に似た女の子と自分の間に子を設けた。其の子を、俺の事が大好きな椎名林檎にする。“有坂林檎”育成プロジェクトが始動した。女児で或る事も確認済みで、胎教として一日一回、映画「シド・アンド・ナンシー」も見せて居る。先ずは順調に出産を待つばかりであった。だが今、気付いてみると目の前には下半身を赤黒い血で染めた母体が横たわって居る。先刻迄の記録フィルム(ドキュメンタリー映画に仕立てるつもり)も切り刻まれている。何も思い出せない。

 ……あたしは此の小心者で口先だけの男が浅ましさを通り越して憐れでした。だから自己満足でしか無い歪んだ子作りに付き合う事にしました。あれは彼がヴィヴィアンのベビー服が原宿に在る筈だ、と云って出掛けた日でした。手ぶらで帰宅した彼は泣き乍ら「ほほほ本物、ほんもんが」と口走るのです。「おおな、お腹が大きくて2人がぁ、あああ」「は?」「凄えハッピーそうな男女はデニムのマタニティードレスに、手と手繋ぎ合って!」ふーん成る程。こいつ見てしまったのね。リンゴちゃんを。「だからどうしたの嬉しかったんでしょう?今更本物が善いなんて云ったら殺すよ。」「う」「つーかあんた自分が林檎に好かれるとでも思ってるの此の際だからアレだけど。はっきり云って変態よ。」「……プロジェクト、失敗だね。」お腹に物凄い衝撃を受けてあたしは壁にぶつかりました。彼は土足のままであの爪先に鉄板の入ったブーツで蹴られたら痛そうと冷静に考えている自分に少し驚きました。が直ぐに生理痛なんか比較にならない位お腹が痛くなって彼も執拗にインステップキックを繰り返したのであっさり意識を喪いました。

 ……大志はその後、男性に犯された。細部の事情は割愛するが、要は金を得る為である。太目の中年は無理矢理精液を飲ませたので、味が口に残って離れない。うがいして紅茶飲みたいし、裂けた肛門にオロナインを塗りたくて薬局を探して居た。でもうがいしても取れないだろう、と思いふと目をやると黒塗りハイヤーから本谷有希子が降りるのが見えた。見るからにハイソサエティーな男性達にエスコートされて、とても一般人が入れない様な高級料理店に入って行った。大志はお尻が痛い。

 ……未だ影も形も無き我が子よ。お前の父はこうして何とか生きて居る。其れはお前に逢う為なのだよ。
(終)


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