第一回から今までやって来たものを振り返り、今回はもうちょっと静かで内面を重視した、『アダルト』な感じを貫こうかと思いました。「劇団、本谷有希子」が今まで描いて来た10代女子の妄想とそれを取り巻く世界とは違い、一通りは粋も甘いも知り尽くした(?)20代後半の女優中心の舞台になる予定。派手よりは地味、そんな感じでじっくり一つの場所の人間模様を芝居にしたいと思っておるのであります。
寂れた漁村、どこにでもありそうなスナック『Moon River』。ここで嵐前夜、ひっそりと一つの事件が起こる。何も知らずいつも通り出勤した女達は今日も来ない客を待つ。深夜、大雨によって店から出られなくなった彼女達は昨晩からいない女の子のことや何となく漂う異質な雰囲気を感じながらも、物置きから見つかったボロボロのビデオカメラで遊び始める。全員の願いはこのまま何も気付かずに馬鹿をやりながらいつも通りの朝を迎えることだけだ。しかし一同のそんな想いとは裏腹に、ますます外の嵐は強まっていき………。
物語、表バージョンのクライマックスとなるのは、なんとダンス。その振り付けは最近ダンス界で一気に注目を受けているカンパニー「ニブロール」主宰の矢内原美邦さんに指導して頂きます。「やってみたら意外に上手かった」を目標に、踊ったことない役者達が必死に踊る姿はきっと皆様の疲れた心を和ますことでしょう。
...などなど全編に趣向を凝らしたミステリー要素や華麗なダンスをばらまきつつ、今回の舞台は「じっくり地味に」をテーマに過剰さ控えめ。今までの小娘の戯れ言とはひと味違う、20代後半のちょっぴりアダルティな女の病気シリーズ「劇団、本谷有希子」を中野・ウエストエンドスタジオまで是非是非お楽しみに来て下さい。
2002年8月 本谷有希子 |