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本谷有希子 × 馬渕英里何 対談 前半
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――本谷有希子さんと馬渕英里何さんの対談を企画致しました。よろしくお願いします。 (本谷・馬渕)お願いします(笑) ――まずですね、馬渕さんは前回公演『腑抜けども、悲しみの愛を見みせろ』(04年11月10日-14日、青山円形劇場)をご覧になったという事なんですけど、お二人はその終演後に会ったのが初対面だったんですか? (本谷)ううん、挨拶とかはしてる。どうもどうも、(お酒を)どうぞどうぞ、とかね。初対面ではない。 ――面識はあったけれど、一緒に何かをやるのは今回が初めてという事ですね。 (本谷)はい、完全にそうですね。界隈が違うからね。 ――馬渕さんは今まで、劇団☆新感線やKOKAMI@networkなどの大きな舞台に色々出られていますけれども、今回みたいな小劇場のお芝居に出るという事をどう思われるんですか? (馬渕)お金になるかならないかって言ったら、全然ならないんだけど……。 (本谷)残念ながら(笑)。 (馬渕)でも、そういうリスクを犯しつつ、それでもやりたかった。 ――それはまたなぜ? (馬渕)それは単純で、本谷さんの芝居が面白いなと思ったから。私と同世代の人ってこの世界になかなかいなんですよ。でも、私は同世代の人と一緒に作っていきたいというのが夢で。だから今、すごく理想的な環境ですね。 (本谷)同い年(註:二人は共に79年生まれ)って意外にいないなぁ。全く一緒と聞いた時は、何か運命的なものも感じたよね。25歳の女が書いた物を25歳の女が演じる訳じゃん。ズレがないじゃん。 (馬渕)そうだね。 (本谷)でもさ、馬渕さんが『腑抜け?』の時に楽屋に来て、「こういうの好きなんですよ」と言ってくれなかったら、こんなふうに巡り会っていないよね。こういう世界観を認めてくれるってアピールがあったから、「えいやっ!」ってホリプロに依頼できたと思うし。 (馬渕)会話したことが奇跡だと思うもん。だって私、「面白かったな」と思っても、何も言わずによく帰ったりもするのね。飲み会とかにもあんまり行かないというか、そういう付き合い方ができる方じゃないし。 (本谷)でもこうやって巡り会って、一緒にやってみて、今の時点で結構手ごたえを感じているんで。稽古、楽しいですか? (馬渕)楽しいです。 (本谷)<奈々瀬>って役は汚れ役でしょ。汚れ役が楽しいってこと? (馬渕)本人としては汚れてるつもりは無いけども(笑)。 (本谷)いやぁ、すごく悦に入ってる感じがするよね。「この人、喜んでやってるよ!」って。頼もしい。 (馬渕)私みたいなスタンスで来てる人って、こういう役をやる機会がないと思うの。だから今回の役との出会いって、すっごいすっごいレアな確率をヒットしたみたいな感じなんですよ。 (本谷)私が書いている感じもそんな一般的じゃないし、それが嫌な人は嫌だろうし、やりたくないと言う人はいくらでもいるよね。 ――そこで本谷さんは、馬渕さんならやれるだろうと。 (本谷)馬渕さんにやらせたい役を書いてるからね。 (馬渕)大丈夫? その辺にズレはない? (本谷)ズレてない。「馬渕さんのこういう感じが見たい」と思ってやってもらってるんだけど、ハマッてる感がすごくある。馬渕さんに出演してもらうって決まった時、まず「スエット!」って思ったのね。ホリプロから呼んどいてスエットしか着てない役っていうのも「いいよねー」と思ったし、他の人が当てないような役を当てようという狙いもあって。他では見れない馬渕さんをうちで見せようと思うから。 (馬渕)「私はこういう役がやりたかったの!」って声を高々に言いたい。 (本谷)えっ。スエットをずっと着たかったの? (馬渕)そうそう(笑)。私、自分が出る芝居の宣伝とか絶対しないんだけど、今回しまくってるもん。「絶対観に来た方がいいよ。なんで来ないの!」って(笑)。 (本谷)<奈々瀬>という役をやってもらって、馬渕さんの役者としての振り切れ方ってすごいなぁと思ったよ。振り切れ方に説得力があるんだよね。 (馬渕)説得力は一番大事だと思ってるからね。嘘はやりたくないなって。 ――『乱暴と待機』という作品や<奈々瀬>という役柄について、今までの稽古を通して馬渕さんが感じられたことなど、教えて頂けたらと。 (馬渕)ええと、私の好きな世界観だったり役柄だったりするんだけど、「迷うかも」っていう不安がちょっとあった。でも、立ち稽古を始めたら色んな事が見えてきて。演技を試してみて違うとなったら本谷が削ってくれるし、ノってくれたりもするし。「一緒に作ってる」感じがすごく面白くなっちゃって、だんだん「この方向で行こう」と自分の演技プランが決まっていったんだよね。 (本谷)うちは多分、演出家と役者の区別が他よりもちょっと曖昧なんだと思う。私もよく人の意見を聞くし、わりとディスカッションしながら作っていくっていうのは同世代ならではなのかな。他はもうちょっと言う側と言われる側が分かれてるんじゃないの? (馬渕)そうだね。私も普段はあんまり、演出家に「分かんない」とか言わない(笑)。 (本谷)指示する側とされる側みたいな立場がうちはグズグズ(笑)。人の意見を聞くのが好きなんだよね。 (馬渕)聞いてるの? (本谷)聞いてるよ(笑) (馬渕)本谷がすごく信用できるのは、決断が早くてハッキリしているところ。「あれやって」「これやって」って。 (本谷)思いつきで言ってるから(笑)。 (馬渕)演出家からの要求が増えることって、役者としてはすごく楽しいよ。台詞だけじゃない情報量が増えていくわけだから忙しくはなるけど、忙しいってことはつまり芝居が"埋まる"ってことだし、"埋まる"ほどできあがったものは面白くなるし。 (本谷)私の癖なんだけど、台本の意図とかもバーッと全部言っちゃうんだよね。なんで言うかっていったら「そんなに考えて書いてんだ、すごいねー」って役者に言われたいからなんだけど(笑)。 一同笑。 (馬渕)台無し(笑)。 (本谷)誰も言ってくんないだけど、結構考えて書いてるんだよ。あ、全然話変わるけど、この間稽古の帰りに電車で喋ってて衝撃的なこと言われたんだけど、馬渕さんは汚れてもオッケーらしいのよ。だけど私はどっちかって言うといい感じに見られたいから、真逆なんだよね。「なんでかねー?」って馬渕さんに聞いたら、これがすごい衝撃的だったんだけど「無いものねだりじゃない?」って。あーあーあー納得(笑)。 (馬渕)役者は自分を捨てていかないと。「どこまでこの人は裏切ってくれるんだろう」と思えるスリルを楽しみたいのね。今回の芝居でしか馬渕を見たことがない人だっているわけじゃない? そういう人たちに「馬渕って嫌いだわー、なんかムカつくわー」って言われたら、涙しながらヨシッ(ガッツポーズ)ってなる(笑)。 (本谷)ほらね、真逆。私はもう好かれよう好かれようとするから(笑)。とにかく、<奈々瀬>をやってもらって手応えを感じてます。馬渕さんの新しい魅力が出ててこれはなかなか良いんじゃないのって。 (馬渕)でもまだ追い詰めるところには達してないよね。こういう芝居は、追い詰めていく段階になると恐い。 (本谷)私もテンパルよーテンパリますよー(笑)。 (馬渕)今回特に登場人物の間の"微妙なところ"がうまくいくかどうかが勝負だしね。切なかったりもするし、そのつど役の感情をきちんと作らないと。 (本谷)うん。今回は4人の関係性をきちんと見せたいというか、"笑い"とかじゃないところで勝負してるつもり。そうなると、一人一人がどれだけ深く役を掘り下げていくかって作業になるから、みんなシンドイだろうね。それに、良いシーンとかもさ、恥ずかしくはしたくなくて。別にキレイなものを求めてないから、キレイというよりどっちかと言うと汚いものなんだけど、だから何かよく分かんないけど良いシーンだったみたいな事にしたい。あと、私たちの"若い"部分とかがちゃんとエンターテイメントになるんだったら、それはまだ見せた方が良いんじゃないかとも思う。無理してこの年で落ち着かなくてもいいしなーっていうのがあってね。ただ"若い"だけなのも痛々しいから、その辺のバランスはすごく考えてる。 (馬渕)ラストシーンはどんな感じ? (本谷)昨日書き上げたんですが、奈々瀬喋ってますよー。すごく喋ってるシーンありますよー。 ――それは今まで稽古を見てきて、馬渕さんが演じる奈々瀬に喋らせたいなと思ったからそういうラストになったんですか? (本谷)うん、それは影響してると思う。一応ラストまでの流れやオチは最初から決めてあったんだけど、細部までは詳しく考えてなくて。でも、稽古に入って馬渕さんがやってるのを見て、これは今思ってる感じで台本を書き上げても、この人は多分体力が余って「物足りないなー」ってなると思った。だから、最初に書こうと考えていた感じよりは、もっと気力体力を出し切る感じにして。馬渕さんは今稽古をやっていて、持て余してるって意識はあるの? (馬渕)ううん。持て余してるつもりはないけど、やれと言われたら何でもやるよ(笑)。 (本谷)「何でもやるよ」の器が、当初やらせようと思ってた器よりデカイから、「だったらこの器はもうちょっと入れても良いんじゃない?」って(笑)。誰がやっても同じ役を書いたんじゃなくて、馬渕さんが演じるからこそ、この役を書いたんだなってすごく思うよ。
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| 後半に続く。 |